フィギア坂本花織4連覇ならず トップアスリート・孤独な戦いの向こう側

スポーツの世界に限らず、それぞれの分野で頂点に立つということは「栄光」や「羨望」の眼差しに包まれる一方で、常に孤独な戦いを強いられることでもあります。
アメリカのマサチューセッツ州ボストンで3月28日(日本時間29日)に開催されたフィギュアスケートの世界選手権で、日本女子フィギュアスケート界のエース、坂本花織選手が銀メダルを獲得しました。
昨年まで3年連続で優勝しており、今回は4連覇を目指して臨んだ大会でしたが惜しくもその記録には届きませんでした。
彼女がどれだけのプレッシャーの中で戦っていたのかを想像するだけでも震えてしまいそうです。
今回はそんなトップアスリート・坂本花織選手を通して感じた「学び」のお話です。
頂点に立つ者の宿命
戦いを終えた坂本選手の言葉には、トップアスリートとしての戦いの過酷さと、自らの精神力でそれを乗り越えたとき、その先にある新たな視点が込められていたように思います。
「今までは何連覇とか、優勝候補とかいろいろあって、でも1回ゼロになれば、自分もたぶんスッキリするだろうし、追いかける立場になれたっていうのは、本当に自分自身、大きいなって思う」
私はもちろんスポーツの世界でトップに立った経験もなければ、ましてや世界で戦う経験などありません。
なので、彼女の本当の気持ちを理解することは難しいです。
でも、恐らくこうして世界の頂点に上り詰めたアスリートは、その瞬間から常に勝ち続けなければならないというプレッシャーを抱えるのが宿命なのでしょうね。
でも、一方で「負ける」ことによって新たな目標を見出し、心新たにすがすがしく次なる挑戦に向けて意欲が湧くこともあると思います。
トップを走り続けることの難しさと、その座を守るための重圧は計り知れないですが、負けたことが新たな気づきもたらすこともあるわけで、今回、4連覇を逃した坂本選手にとっても、これが大きな転機となるといいなと思いながらインタビュー記事を読みました。
「必要な負け」がもたらしたもの
坂本選手のコーチである中野園子さんも言っていたそうです。
「必要な負けだったんじゃないか」
この言葉は、勝ち続けることだけが成長ではないという真理を突いていると思います。
試合の結果としては銀メダルでしたが、坂本選手の演技はほぼ完璧だったと中園コーチも話していたそうで、場内からは万雷の拍手が沸き起こったといいます。
「こんなにも悔しい試合になったのは、久々」と悔し涙をたくさん流しながらも、「自分でもよく頑張ったな」と冷静に自己承認できる坂本選手。
あらためて、世界で戦う彼女の「強さ」がそこにあるようにも感じましたね。
今回の「負け」をどう捉えるかは、彼女自身の今後の成長に大きな影響を与えることになると思います。
ここまでの数年間、トップを走るアスリートとしてずっと張りつめていたであろう緊張の糸を少しだけ緩め、フィギュアスケートを「ただ純粋に楽しむ」ためだけの時間を過ごすのも良いのではないでしょうか。
ご本人もインタビューで語っていましたが、また追いかける立場に戻れるというのは、自分のためにまた新たな目標を追いかける楽しみを得られたということ。
底抜けに明るい坂本選手のノビノビとした演技が、また次のリンクで花咲くよう願っています。
勝者と敗者を分けるもの
今回の世界選手権で坂本選手を抑え金メダルを獲得したのは、開催地アメリカのアリサ・リュウ選手でした。
彼女はわずか13歳で全米選手権を制した天才少女。
その後、北京オリンピックや世界選手権で好成績を残すものの、16歳で突然引退してしまいました。
それから1年半のブランクを経て、今回、見事な優勝を果たしました。
リュウ選手の見事な復活優勝は、多くの観客に驚きと感動を与えたようです。
競技を離れていた時間が彼女にとってどう作用したのかは本人にしか分からないことですが、結果としてそのブランクが彼女には「必要な時間」だったということでしょう。
フィギュアスケートに限らず、どんな競技においても勝者と敗者を分けるものは、時としてほんのわずかな差でしかありません。
でも、その差は単なる技術の違いだけではなく、メンタルの強さや競技への向き合い方にも起因するもののような気がします。
まとめ
スポーツだけでなく、なにごとにも「勝ち続ける」「成功し続ける」ことは並大抵の努力では成しえないし、常にプレッシャーとの戦いでもあります。
でも、負けたからこそ見える景色があり、失ったからこそ気づく大切なことがあると私は信じています。
そこから、また、新たな挑戦が始まる。
敗北をどう捉え、どう次につなげるか、それを冷静に判断して次の一歩を踏み出す勇気、それこそが真の強さなのかもしれないですね。
坂本選手のこれからを、遠くから応援しています!